
歴史、祈り、食——筑後には、土地の歩みを感じる風景が点在しています。
産業の記憶にふれ、静かな社で心を澄まし、最後は風土の恵みを味わう一日へ。
炭鉱の歴史を今に伝える「三池炭鉱 宮原坑」、城下町の守り神として親しまれる「三柱神社」、そして柳川で愛され続ける名店「うなぎの原田」。
筑後の奥行きを感じる旅をご紹介します。

■三池炭鉱 宮原坑|近代日本を動かした、宮原坑の記憶
大牟田駅から車で約10分。住宅街に残る三池炭鉱・宮原坑は、明治から昭和初期にかけて稼働した炭鉱施設です。
1898年に着工した第1竪坑は現存し、2015年には世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」に登録されました。
石炭は、近代日本の産業や暮らしを支えた重要なエネルギー資源。宮原坑は、その時代の息遣いを今に伝える貴重な産業遺産です。

宮原坑は、揚炭や人員昇降、排水などを担った三池炭鉱の主力坑。
年間40〜50万トンの石炭を採掘し、大量の湧水を汲み上げるため、当時最先端だったイギリス製の高価な排水ポンプも導入されていました。
昼夜を問わず稼働し、日本の近代化を足元から支えてきた場所で、現在は無料で見学が可能。
レンガ造りの壁や大きな巻揚機などの遺構を前に、ガイドさんの解説を聞きながら巡ることで、当時の技術や現場の様子がより具体的に伝わってきます。

ガイドによる軽快で分かりやすい解説を聞きながら巡ることで、炭鉱の歴史や背景がより身近に感じられます。
なかには、実際に炭鉱や関連会社で働いていた元炭鉱マンの姿も。現場を知る人の言葉だからこそ、当時の時代の熱量や、日本経済を支えた石炭の存在が実感をもって伝わってきます。
三池炭鉱 宮原坑
住所:福岡県大牟田市宮原町1丁目86-3
開館時間:9:30〜17:00
休み:毎週月曜(祝日の場合は翌平日)
電話番号:0944-41-2750(大牟田市観光おもてなし課)

■三柱神社|水のまち・柳川に息づく、三柱神社の歴史
戦国から安土桃山時代に活躍した名将・立花宗茂公。「西国一の武将」と称される武勇だけでなく、領民思いの名君として今も語り継がれています。
関ヶ原の戦いで一度は領地を失いながらも、後に復帰を果たした唯一の大名であることから、「復活の神様」として信仰を集めています。
その立花宗茂公と立花家ゆかりの三柱を祀るのが、柳川の三柱神社。
江戸時代・文政9年に創建され、必勝祈願や願い事の成就、再起を願う参拝者が多く訪れる、地域に根ざした神社です。

三柱神社には、立花宗茂公とあわせて二柱の英傑も祀られています。
宗茂公の岳父・戸次道雪公(べっきどうせつ)は、雷神を斬ったという伝説から名刀「雷切丸(らいきりまる)」で知られる九州屈指の猛将です。
半身不随となった後も戦場に立ち続けたことから、厄除けや病気平癒の神様として信仰されています。
もう一つの柱は、宗茂公の妻・誾千代姫(ぎんちよ)。女性ながら城主を務めた才色兼備の人物で、家内安全や良縁、女性守護の神様として親しまれています。

観光客で賑わう柳川の町なかにありながら、堀割に囲まれた境内には穏やかな時間が流れます。
四季の自然に包まれ、散策の途中に静かに祈りを捧げる人の姿も。三柱神社は、柳川の人々にとって今も変わらぬ心の拠り所です。

立花家ゆかりの意匠や季節を映した季節限定御朱印、切り絵御朱印も近年の楽しみのひとつ。
参拝の記念として人気が高く、繊細な切り絵の美しさが印象に残ります。

歴史ある神社でありながら、三柱神社は今も暮らしのすぐそばにあります。
人生の節目や一年のはじまりに手を合わせ、日々の中で心を整える場所。柳川の人々にとって、変わらずそこにある安心の象徴といえるでしょう。
三柱神社
住所:柳川市三橋町高畑323−1
お札、お守りの授与:9:00〜17:00
電話番号:0944-72-3883
HP:https://mihashirajinja.org/
アクセス:西鉄天神大牟田線「西鉄柳川駅」で下車、駅より徒歩5分
■うなぎの原田|二百年の技が息づく、柳川のせいろ蒸し

水郷・柳川を訪れたら欠かせないのが、川下りとともに味わう「鰻のせいろ蒸し」。
掘割に囲まれたこの町では、鰻は古くから身近なごちそうとして親しまれ、江戸時代にはすでに食文化として根づいていました。
そんな柳川で200年以上暖簾(のれん)を守り続けてきたのが「うなぎの原田」。柳川最南端に店を構え、もとは持ち帰り専門として評判を集めてきました。
現在は5代目が味と心を受け継ぎ、平日でも行列ができる人気店に。地元の祝いの席から旅の楽しみまで、変わらぬ柳川の味を伝え続けています。


原田のせいろ蒸しは、ひと口目から印象的。蒸しを重ねることで、鰻は肉厚でふっくら、ジューシーさの中にほどよい弾力と力強い旨みが感じられます。
ご飯にも秘伝のタレと鰻の旨味がしっかり染み込み、最後まで飽きることなく味わえます。
料理を支えるのが、船大工に特注した重厚なせいろの箱。水郷・柳川ならではの発想から生まれたもので、手入れと修理を重ねながら大切に使われてきました。

そして何より欠かせないのが、代々受け継がれてきた焼きの技。
鰻の旨みを閉じ込めるその手仕事は、原田ならではの真骨頂で、「これぞ原田」と親しまれてきた理由が、この一杯に凝縮されています。
受け継がれてきた味と技を守りながら、柳川の食文化を今に伝え続ける一軒です。
うなぎの原田
住所:柳川市大和町中島451-1
営業時間:月曜11:00〜L.O14:00、水曜〜日曜 11:00〜L.O14:30、16:30〜L.O19:00(※ランチは予約不可)
休み:火曜
電話番号:0944-76-4229
HP:https://unaginoharada.com/
旅の合間に立ち寄り、時を重ねた風景にそっと心を預けてみてはいかがでしょうか。筑後には、昔から受け継がれてきた暮らしや文化が、今も自然なかたちで息づいています。